ももんがの病院観察記録 循環器科編


 約1年まえのことである。なんだか胸の辺りが詰まるような息苦しさを覚えた。のどが詰まったような感じでもある。もしかして、心臓?・・・と思いつつも、忙しさにかまけてそのままにしていた私だった。
  その違和感は、一日に何度も起きたかと思えば、何週間も現れないこともある。そんなある日、ネットで検索すると、そんな症状の時には脈がとんでいるかを調べろ・・・と書いてあった。早速調べると、・・・・とんでいる、脈が!更に調べると、気づいているのに気づいていないフリをしていたある言葉が浮かび上がってきたのであった。「○○期障害」・・・・。イヤだったので、さらに気づかないフリをして何ヶ月か経った。
  医療関係に詳しい同僚に聞いてみると、職場の心臓検診で異常はないのだから多分大丈夫だろうけど、念のために一度検査をと進められた。よく考えたら、一度だけ異常があったのを思い出した。ユキ先生のライヴ「幻覚のタンゴ」の翌日の人間ドッグで不整脈が出たんだっけ。
  最初の異常からやく10ヶ月経って、やっと私は検査に出かけたのであった。
 近所の大きな総合病院。この病院は、市のシルバー人材活用とかで、駐車場の係員はおじいちゃんがやっている。前回咳が止まらずやってきたことがあった。駐車場は満車であった。入り口に立っていた係員のおじいちゃんは、
「満車です。第4駐車場へ行けば、多分今なら止められる可能性があります。この道をまっすぐ行くとすぐ左です。お気を付けて。」
と、シルバーとは思えないほどテキパキと説明してくれた。
 説明された通り行ってみると、おじいちゃんは先回りし、私やその他の車を誘導するのであった。100メートルくらい離れているのに、なんと素早い。駐車して、戻ってくると、おじいちゃんはすでに戻ってきており、私への説明と同じように各車に駐車場の最新情報を伝えていた。おじいちゃんではない。彼は職人だった。
  受付にやってくると、診察券を機械に差し込んで受付をする。内科は4人の医師が診察をしている。一応循環器科専門の医師を選ぶ。看護士さんの話を聞くと、この先生はほとんどが予約の患者らしい。心臓って経過観察が必要なんだろうな。
  名前を呼ばれ診察室に入る。医師は40代くらいの男性。優しそうな、気弱そうな感じ。私の訴えは簡単明瞭であった。
「数ヶ月前から脈が飛ぶことがある。毎年心臓検診をやっているが一度もひっかかったこ とはない。念のため検査をして欲しい。」
すぐに、「ああそうですか。では検査の予約を入れましょう。」と言われると思ったのだが、最近の医師はインフォームドコンセントの呪縛があるのか?延々と説明を始めた。
「心臓ですが・・・、心臓はこのような形になっていて・・・・」と理科の教科書のような図をかき、説明を始める。絵は上手い。心臓の絵もまともに描けない循環器科の医師なんてイヤだけど。
 問診もある。起床時刻や食事、睡眠についてなど・・・。
医:「最近疲れてますか?」
も:「ええ、まあ、疲れてる・・・・かな。」
医:「仕事でストレスたまってますか?」
も:「まあ、そうですねえ・・・・。」
ぼんやりと生きているももんがは、返答もぼんやりしていて、医師の期待に添えないのであった。医師は疲れた表情で続けた。
「私もねえ、夜勤明けの時とか脈が飛ぶんですよ・・・・。」(しばし沈黙が流れる)
こんなに疲れていて呪縛されている医師にどうして、
「ネットで見たから知ってます」とか
「説明はもういいから早く検査予約を入れて下さい」とか言えようか。彼の不整脈が心配である。私はだまって医師の説明にうなずき、最後まで聞き終えた。
 検査は、後日行われた。心臓のエコーを取り、24時間の心電図をとる機械を胸に貼り付ける。(翌日はがしてもらいにくる)
 最近の病院は変わったと思う。患者はお客様扱いである。検査技師は微笑んで自己紹介をし、丁寧に説明をする。20分くらいかかるとか、途中でモニターから音が出るがそれは鼓動の音なので心配いらないとか・・・。彼女もインフォームドコンセント呪縛か?いや、ただのマニュアルだろう。病院もいろいろ大変なんだろうな。
  10日後、結果を聞きに行った。医師は、データのグラフを見せながら説明する。24時間で、6万だか7万だか鼓動がある。そのうち不整脈は6回だった。律儀な心臓である。
医師は、検査の結果心配はないが、規則正しくストレスのない生活を心掛けるようアドバイスしてくれた。そんな生活は、あなたこそが必要なのに・・・・。 
  その後、脈がとんでる感じはない。あの医師も元気にしてるといいな・・・。