ももんがさんのエッセー 「ライブ幻覚のタンゴ」

 新橋の駅に降り立つと、そこはSL広場。まもなく、参院選出馬の青島幸男の演説が始まるところだ。告知板を見ると、れんほうも出馬している。ユキ先生のショートヘアのジャケット写真はれんほうに似ている。

 私とがんこちゃんはちちを待っていた。ちちとは、がんこちゃんの夫である。がんこちゃんは、いつもちちを「困ったもんだ」のように言ってるが、実はそうではないことを私は長男から聞いて知っている。洞察力に優れた長男は、わずか6歳のときに「ははって、わがままなんだよ」と語り、がんこちゃんがかわいい妻であることを見抜いていた。

今日は、待ちに待ったライヴ「幻覚のタンゴ」。会場近くに勤務するちちは、新橋らしくないオシャレな創作和食のお店に案内してくれた。いつも飲んでる店には連れて行くなと、がんこちゃんからきつく言われていたようである。平日の明るいうちから都内のしゃれた店でお食事なんて、うーーん優雅だ。

 会場に着くと、瀕死のやまねがちゃんとたどり着いていた。仕事場ではあんなにやつれていたのに、ライヴが近づくにつれて免疫がアップしたと思われる。妙なオーラを発している。そのうち「先生」と呼ばれたご高齢の男性と数人が開場に先だって席に案内された。何の先生?ユキ先生の恩師?何の?シャンソン?でも、服が普通のスーツでシャンソンっぽくない。でも、シャンソンっぽい服ってどんなのだ?・・・などとどうでもいいことを考えているうちに開場の時間になった。

 ざっと見て、会場の大きさは200人くらいかな。これくらいの大きさって一体感があるよね、と話し合う森の仲間。プログラムを見て「幻覚のタンゴ」「ワンファインデイ」があることを喜ぶ私、ももんが。初めて聞いたときからこの曲はお気に入り。ライヴのタイトルになる曲に目をつけるなんてさすが私!そして隣の席には「寝たきりマンボ」があることを喜ぶマニアックなやまねの姿があった。そしてトイレに立ち、受付近くを通ると、そこにいるのはまさしく管理人さん。ああ、こういう人だったんだー。イラストそっくり・・・。「ももんがです!!」と言おうかと思いつつ「ランドーさんの本はありますか」と突飛な質問をしてしまった。いきなりランドーさんと言われた管理人さんは、ちょっとあわてて、また少し疲れが増したように見えた。ごめんなさい。汗も増えたかも。

 開演・・・。男性がピアノを弾くのってかっこよくて好きだ。今夜のピアニストは、くらもちふさこの音楽ネタのマンガに出てくるピアニスト少年(というにはちょっと無理が・・・?)のようでうれしい。とってつけたようにピアノを磨く演技も好感が持てるわ。 あっ、ユキ先生登場。真っ赤なパンプスが、印象的。この衣装は自分で選んだのかな?41回失恋した40歳にぴったりだ。1曲目、生タンゴ。やはり生は迫力がある。幻覚のタンゴには夜がよく似合う。うれしい。4曲目の寝たきりマンボで、マニアックやまねがとても喜んでいた。曲の好みは違っても思いは同じなんだな。

 2幕目、すごい・・・。ローズマリーのこのパワーは何?やはりユキ先生は女優だったんだ。1幕目の失恋したお客役と、ローズマリーと、シュガーヒルのシンガー、そして教室の先生。みんな別人のよう・・・。後半には、左後ろの男性が、ローズマリーの言葉に、うんうんとうなずき、笑い、そして曲が終わると「ブラボー!!」と叫んでいた。振り向きたい衝動にかられたが我慢した。誰だろう?常連さん?もしかしたら、亀有のミュージカルで「ブラボー!!」と叫んだ人?

 楽しい時間はすぐに終わる。でも、昼間の仕事の疲れがどこかへふっとんだような気がする。ローズマリー効果だろうか。元気を取り戻し、新橋駅のマツモトキヨシ前で「お客様〜」と騒ぐ森の仲間であった。

 そして、私の体へのローズマリー効果は翌日の人間ドッグで明らかになった。不整脈だ。しかも、健康にはなんの影響もない。おそるべし、ローズマリー。