ももんがさんのエッセーVol.2 「ミュージカルへ行こう! in 亀有」

 ユキ先生にゴスペルを教わるようになって半年が過ぎた。初めて見るステージが、ご本人初めての経験のミュージカルだなんて。CDは何度も聴いたし、練習中の生声ももちろん聴いてる。でも、ミュージカルとなれば当然踊りもあるはずだ。踊りと言ったって、あのレッスン前のウオーミングアップのダンスとは違うしねえ・・・。そんなことを考えていた。

行動的なやまねは、すぐに場所を確認。電話をかけてチケットを入手する手はずを整えていた。いつも思うことだが、私とやまねの生きる速さはすごく違う。私が「へー、そんなステージあるんだ。見に行きたいなー。」とぼんやり考えている頃には、すでにインターネットを駆使して情報を集め、チケットを押さえてたりする。なんて頼りになる森の仲間なんだろう。そういえば、銀座の木村屋であんパンを物色していたときにも二人の差を思い知らされた出来事があった。マンゴーあんパンを私に紹介したら、返事は当然待たない。マンゴーあんパンを片手に「へー、こんなのあるんだ。あっ、ココナッツもあるよ。」と振り向いたらそこにいたのは知らない人。やまねを探すと店の奥深くへと潜入していた。いつの間にあそこまで進んだのだろう。追いかけて先ほどの出来事を話すが、珍しいあんパンに夢中で私のかいた恥については興味はないらしい。次々とあんパンを見ておめめをキラキラさせている。私は急激な孤独感に襲われた。木村屋の中で私は独りぼっちだった。

 ところで私はミュージカルって、劇団四季くらいしか見たことがない。オペラ座の怪人は大好きで3回見た。キャッツもよかったし、美女と野獣は、ポットやお皿が踊ってて、笑った、いや大迫力だった。でも、急な話だったという今回のミュージカルは想像もつかない。あやしい占い師(あれっ、あやしいって言ってなかったっけ?)だから、人間の役だよね。ネコやお皿のかぶり物は着けてないはずだ。

 ユキ先生からもらったチラシに、かつて大ファンだった「ナレーター野沢那智」の名を見つけた。生声?もしかして最後の舞台あいさつで出てくるとか?と大喜びの私に、ユキ先生の声が響いた。「でも、録音だよ。」 くーっ、やっぱりアランドロンは来ないのか。自慢するが、私は高校生の時になっちゃこパックで、はがきを読まれたことがあるのだ。

さて当日、がんこちゃんとやまねとももんがは亀有にいた。まずはお昼ご飯。これは、私が調べておいたお店の1つに行った。おいしいスパゲティだった。このころ、ユキ先生は、出演者なのに自分で調達したごはんを哀愁を漂わせながら食べていたという。なんでも聞いてみないと分からないものだ。
 会場に行く前に、プレゼントの花束を作ってもらった。こういう場合、どんな花束にするのか。私たちには初めての経験でよく分からなかったが、センスのあるがんこちゃんのリードで、花束は無事できあがった。時間もせまり、他のお客もいたので、話し合うことはなかったが、花屋の店先で私は考えていた。花束って自分の好きな花を選ぶときもあるし、相手のイメージに合わせることもある。この花の中でユキ先生のイメージの花ってどれなんだろう?バラ?ユリ?なんか違うな。いや、役のイメージか?あやしい花ってどれ?・・・またもやどうだっていいことを考えていた。

 会場にはたくさんの人があふれかえっていたが、私たちは、一番音がいいと思われる位置を確保し、腰を落ち着けた。いよいよだ!

 出演者が多い。でも、すぐにユキ先生を発見。布をまとっている。あっ、動いた。サディアの設定年令はいくつなんだろう。・・・ああ、セリフしゃべってるー。これではただのおっかけである。そうか、私たちってただのおっかけか。いや違うな。そもそもおっかけってどういうこと?再びどうでもいいことを考える。

 サディアの歌う「パワー」は迫力があった。ステージに登ると、まず発声が違うことがシロウトでも分かる。他の若者とは全然違う。当たり前か・・・。ユキ先生は、彼らが生まれる○○年も前からシンガー竹下ユキをやってるんだし、比較しては前途ある若者がかわいそうというものだろう。

 この日、私が一番ドキドキしたシーンは、サディアがドラム缶の上で歌うところだ。あんな不安定なところで?落ちたりしないだろうかと、足下ばかりが気になる。二人の男性に腕をとられ、ドラム缶からかっこよく降りたときはほっとしたものだ。そして、「こんなところで歌うなんて!」オーラを発していたサディアの足下が安堵に包まれたのを私は見逃さなかった。

 戦いのシーンでは、舞台を何人もの人が駆け回った。上手から下手へ、後ろから来て、中央で演技し、また舞台のそでへと消えていく。サディアの意味深な動きに注目していた私であったが、まだ、4,5歳と思われる子役がステージで思いっきり転んでしまっても、すっくと立ち上がりダッシュした姿には目がくぎ付けとなった。子役にくわれるってこういうことか?(全然違うか・・・)

終わってみて、ユキ先生のセリフの多さに、そしてステージへの出入りの多さに改めて驚いた。歌だけじゃなく、演技もたくさん要求されたんだ。でも、決して嫌いではなさそうだな。そう思った。

 幕間にスポンサーの看板がステージを飾っていた。あまりに直接的な表現に、森の仲間はみな感動していた。このストーリーは、とても真剣なテーマだったし、笑いをとるところだってほとんどなかった。なのに、この笑える看板。いったいどういう意図が?もしかしたら笑ってはいけなかったのだろうか?

 幕が下り、花束をかかえてうろうろするが、ユキ先生はなかなか出てこない。主役の若者とその友達らしき女の子、そしてその子たちのはしゃぐ声がロビーにあふれている。スタッフに呼んでもらった。やっと会えた。離れているときは気づかなかったが、ステージの化粧は濃い。こんな顔になってたのか・・・。りっぱな舞台女優だ!!