ももんがさんのエッセーVol.3 「ディズニーランドの楽しみ方」

 ディズニーランドへ行った。年に2,3回遊びに行く我が家では、それなりの研究をし、攻略法を考えて出かけるのだ。シーにも行くが、私はランドの方が好きだ。日曜日は、高速はすいているが、ランドは混んでいる。平日はランドは多少すいているが、高速は混んでいる。その日は、平日。6時半に出発したが、ランドに着いたのは、開園の8時30分を過ぎていた。出遅れた。

 ランドでは、定期的に新しいメニューができている。私が必ず入手するのは、ポップコーンである。遊園地と言えば歩きながら食べるポップコーンである。(でも、映画館もやはりポップコーンだ。)ポップコーンそのものもさることながら、その入れ物が毎回、新しくなっている。しかし、通は前回の入れ物をっていき「おかわり」するのである。いや、ホントの通は、毎回変わる、その入れ物をコレクションしているだろう。何年か前に買ったちょっと珍しい組み立て式のその入れ物をぶら下げて歩いていると、時折その入れ物を凝視する人とすれ違う。中にはこちらを指さしてひそひそ話す人もいる。もちろん、私に後ろ指を指しているのではなく、この入れ物に注目しているのだ。主役は入れ物でもちょっといい気分になる。

 我が家はニセモノの通なので、毎回この入れ物を持参する。売り場のお姉さんにそれを差し出すと「おかわりでいいですか?」と聞かれる。なぜ、こんなにもアメリカナイズされた場所で「おかわり」 なのだろう?私はいつも疑問に思う。時々、「お手、おかわり」をするウチの犬を思い浮かべたりする。でも、ディズニーランドといえば、計算しつくされた娯楽施設である。かの、ウォルト=ディズニーの精神が脈々と生き続けているはずだ。当然、接客のことばも計算され、マニュアル化されているはずだ。「おかわり」は厳選された言葉なのだ。きっと・・・。

 今回の新味は、なんとクリームソーダ味であった。ちなみに、過去に、ハニー、キャラメル、ココナッツ、アップル、シーソルトなどいろいろ食べてみた。今回はちょっとためらったが、話のタネに買うことにした。確かに辺りにはソーダの香りが漂っている。今回も「おかわり」 をしてよくよく見ると、表面に抹茶色の物体が付いている。これが「クリームソーダ」フレーバーなのか?ちょっと気持ち悪い。でも、味は甘く確かにソーダと言えばソーダだろう。

 毎回ながら、ポップコーンの開発には頭が下がる。きっと、「ポップコーン開発部」の部員は、何を食べてもポップコーンと結びつけてしまうのだろう。デビューすることなく消えていった数々のポップコーンがあったはずだ。どんなものがあったのか?食べてみたいものだ、怖いけど・・・。

 ランドの20%くらい?は若いカップルである。カップルで来ている女の子は、ほぼかわいい。真夏のこんなに過酷な気象条件でも、オシャレな服を着て、かわいいミュールを履いている。Tシャツ、Gパン、リュック、運動靴、へたすると首にタオルを巻いている人々とは一線をかくしている。目的が「ランド」か「デート」かでこんなに違うのだ。いや、もしかしたら近所のスーパーでもこの違いは健在かもしれない。私はかろうじてタオルを巻いてはいなかった。さすがにバンダナにしたよ。

アトラクション待ちの列は長い。30分待ちなら「すいてるね」の世界である。他の場所では絶対にこんなに待たない。なぜみんな待つのだろう。でも、待っている間には様々な人間模様がかいま見られる。

 ある時、私たちの前には4人家族が並んでいた。両親と小学生の姉弟。とても幸せそうだった。もう、夜になっており「じゃあ、これに乗ったら帰ろうね」などと話していた。そのときである。「わーい、わーい」とはしゃいでいた弟の手が父の目に当たった。「あっ!!」なんと、はずみでコンタクトが取れたらしい・・・。地面にはいつくばる4人。でも、こんな薄暗い中では見つからない。
「どうするんだ、全く・・・」
父は力なくつぶやいていた。さっきまで盛り上がっていた幸せファミリーは、うってかわってどんよりとした空気に包まれ、次第に無口になっていった。同情・・・。

また、何年か前の春のことである。私たちの後ろには中学生くらいの女の子3人が並んでいた。終わったばかりの卒業式の話をしている。
「先輩達、みんな泣いてたよねー。」
「私も曲が聞こえてきただけで泣きそうになっちゃった」
なんてほほえましい子達・・・と思っていると1人が「その曲」を口ずさんだ。
「♪アン フィシャレーン フォ エバー・・・♪」
なんとこれは今練習中のハレルヤではないか。思わず振り向いて一緒にハモリそうになった。しかし、まだ練習は始まったばかり。ちゃんとハモレない段階だったのでやめた。ハモレなくて良かった。ただのヘンなオバサンになってしまうところだった。しかも、音をはずした日には冷たい空気が流れたに違いない。

そして、今回。後ろに並んでいた男女2人は、カップルではなさそうだ。女性が敬語を使い、それぞれの仕事の話などしている。聞くともなしに聞いていると、女性はお肌の衰えについて話し始めた。
「もう、最近ひどいんですよ。お肌ボロボロで・・・。」
「そう?まだまだ大丈夫じゃん?」
そして、彼女は化粧品売り場での出来事を話し始めた。
「化粧品選んでたら、お客様くらいの年齢ですとこちらになります・・・って言うんです よーー。小娘が!!!」
またしても振り向きたい衝動にかられた私であった。
「ちょっと、アンタ!竹下ユキの「ちょっとあんた」を聴きなさい!是非!」
心の中で叫びつつ、遠くを見るふりをしてさりげなく振り向くと、彼女こそ見事に小娘であった。この子をして小娘と呼ばせたその売り場の小娘はいったいいくつだったのだろうか?例えば、私が80歳になったときに、60歳に「お客様〜」と言われたら、愕然として、「20年後にはアンタもしわくちゃ・・・」とか思うものなのか?さすがに、小娘とは思わないだろうが・・・。それにしても、「ちょっとあんた」現象は、街の至る所で繰り広げられている、かなりポピュラーなものなのかもしれない。

  ディズニーランドは大人も楽しめる遊園地である。訪れた人を、ディズニーの世界へいざなってくれる。そして、何回か通ううちに、その計算された工夫の数々に感心する。そしてまた、人間ウォッチングもできる。1粒で3度おいしいのである。